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アニメーションの散歩道

アニメーション、うわさ話とレクチャー

ユーチューブでの人形アニメーション

 人形アニメーター野中和隆(かずたか)氏との世間話で意外な
ニュースを聞きました。氏は以前からTV-CMで活躍、最近の仕事
とはつまり現在の人形アニメーション業界の報告です。

 

私:やはり今もCM仕事してますか?

野中:いやもう仕事に追われてますヨ。でも今はTVの仕事、なく
なりました。ウェブWeb のCMがほとんど。企業のホームページや
ユーチューブYou Tube のCMです。2’なんていうかなり長いもの
ばかりで大変。大体今の若い人はTV見てない。見てる暇ない
です。スマホを検索してると勝手に画面に流れ出るCMです。音も
入ってミュージカルが多いですね。新商品アピールで効果ある。
市場調査ではっきり出てるんです。昔のようなTV-CM15'’なんて
ホントなくなりました。
私(野中)はどこかのプロダクション所属ではなく、まったくのフリー。
仕事の度に声がかかるんです。どこかの貸スタヂオに集まって
撮る。そのスタヂオもいろいろ。時たま写真スタヂオでやる時も
あるんですからねえ。

 

質問:写真スタヂオでは(舞台)セットを組むには不便でも照明
設備は整っているんじゃないの?
野中:いやフラッシュ照明では困るんです。ひどい時は貸スタヂオ
が押えられなくて会議室なんかで撮る時もあります。ま、そんなの
は最後の売り込み商品のアップ・ショットがクライアントの気にいら
なくてリテイクになった時がなんかですけどね。

 


秘密任務?
質問:うわさでは野中さん、アメリカのCM仕事もしてるそうですね。
野中:秘密を守る義務があって、その話はできないんです。今は
ネット全盛でほんのちょっとした写真やうわさ話があっという間に
広まっちゃう。だから契約にあたって徹底的な守秘義務が課せら
れるのです。
昔は製作プロセスの記録写真もよく撮りました。今はそれもダメ。

筆者、あ然。ネット情報の発達でかえって窮屈な時代になったの
です。ま、これぐらいは書いてもいいでしょう。業界誰それのうわさ
話なども聞きました。それは書きません。テーマがズレます。同じ
アニメでも人形の世界はカートゥーンより狭いのです。京橋フィル
ム・センター持永只仁展での雑談でした。

 

人形アニメーション作家持永只仁展

“人形アニメーション作家持永只仁展”

 

物理学と天文学!?
次はもっとお堅い話。「宇宙ものの映像作品に見る物理学と
天文学」と題したレクチャー受けました。
講師半田利弘(はんだ・としひろ)氏は鹿児島大学理学部教授で
理学博士。本人曰く「私はアニヲタです」。『宇宙戦艦ヤマト2199』
の科学考証も担当。なので「宇宙戦艦ヤマト2199でわかる天文
学」(2014年、誠文堂新光社)なんて著作もあります。

 

アニメ仲間と雑談を楽しむ半田氏(中央)

“アニメ仲間と雑談を楽しむ半田氏(中央)”

 

「アニメや特撮に描かれている宇宙シーンを科学的に検証しよ
う、まずビデオ」、次にその根拠を解説してくれました。
たとえば、
中性子は水を通れない、通過できないとヤマトで見せ、「だから
福島原発事故の際、原発の吉田(昌郎)所長が海水を注入して
熱を下げたのは正解だった。原子力安全委員会の班目(春樹)
委員長が海水など入れちゃいかん、と怒鳴って命令してたが、
あいつはマダラメじゃなくてデタラメだ。」
「北朝鮮のミサイルが日本上空を飛んでるのを撃墜しろとか言っ
てる政治家や学者がいる。そいつらはアホ。北朝鮮から打ち上
げて日本上空を飛んでたら物理法則、慣性で、はるか東の太平
洋に落下するはず。科学を知らない指導者がのさばってる」
「なるべく悪口にはならずに」とかご本人は言ってました。でも
楽しく生徒に受けたのは悪口でしたよ。

「君の名は。」の天文学
質問:「君の名は。」がかなり評判高かった。でもあの中の太陽系
天体運行図は間違いだと聞いています。どこが間違っているの
ですか?

 

「君の名は。」問題のショット?

“彗星、ここが問題?”

 

答:彗星とは太陽の周りを長楕円軌道で回っているのです。それが
たまたま地球に近づいても地球の引力よりはるかに強い太陽の
引力に引かれて太陽の近くをぐるりと半周して、またはるか彼方
の宇宙へ飛んでいくのです。地球に引っ張られて落下することは
ありません。また彗星が地球接近して細分裂してもあのように急に
次々と分裂することはありません。もっと時間を置いて分裂します。

彗星と流星は違う、巨大隕石にしても元の姿は宇宙塵だと聞い
てます。なるほど、お勉強になりました。

アニメ作画も技術革新
京都のおもちゃ映画ミュージアムで劇映画「大地のキネマ」を見
ました。前記の持永只仁氏をモデルにした映画ですが、その話
はまた別の機会に。その席上アニメーターの岩崎ヨーコ氏とお
会いしました。
私:あれっ、何でここに? 仕事どうしてます?
岩崎:私、実家が京都なんです。相変らずアニメ描いてますよ。
それを東京へ送信してるんです。
またもや私、あ然。完全な遠隔地勤務だ。技術はここまで進ん
でいた。

プロフィール

小松沢甫アイコン

小松沢 甫 (こまつざわ・はじめ)

日本アニメーション協会 会員・歴史部会
古いフィルムの発掘、保存、公開にも努力
研究は内外の専門書で引用紹介されている
論文に「太平洋戦争とアニメーション 今日も続
く1940年体制・意外で奇妙で厳然たる事実」、
「幻の東宝図解映画社」 主著「持永只仁の足跡・
運命をきりひらいたアニメーション作家」、共著
「キネマ旬報日本映画監督全集(1976)」「山形
国際ドキュメンタリー映画祭 '91 日米映画戦」
など