第6話「月の女王」
ある日、ある時、ひげおじさんは月の近くを ″フンワカフンワカ″ と
漂っていた。
月の女王に挨拶(あいさつ)をしていこう。
久しぶりに会った女王は、火星の王子に失恋をして泣き暮れていた。
涙で月が大洪水だ。
彼女は、三日月(みかずき)のようにやせ細り、かっての美貌(びぼう)
は見る影もない。
女王のつもる話に耳をかたむけた。
祖父である太陽が、従兄弟(いとこ)である二人の結婚に反対したそう
だ。
太陽の言う事は絶対である。
ひげおじさんは女王を優しく優しく慰(なぐさ)めた。
失恋の妙薬(みょうやく)は恋をすることだ。女王はまたたく間に優し
いひげおじさんに恋をした。
いぜんにも増して激しい恋だった。
恋は激しければ激しいほど冷めやすい。
ひげおじさんは放浪癖(ほうろうへき)がうずきだした。
月が三日月に欠け、暗闇(くらやみ)にじようじて逃げ出した。
女王は泣き崩れた。
76年ぶりに訪れた昔の恋人、ハレー彗星(すいせい)と再び激しい恋
に落ちた。
再会を誓(ちか)って。ハレー彗星は「いつまでもいつまでも君を愛し
続ける」と言って旅立った。
月の女王はカレンダーに会える日まで毎日毎日、印(しるし)をつけた。
もう苦しい恋なんかしたくない。
彼のことを思うと胸が熱くなる。
月の女王は天空を見上げ「愛している~」と叫んで赤くなった。