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ほのぼのショートショート ひげおじさん

第3話「贈り物」


ひげおじさん03


ある日、ある時、寒い日であった。雪が降って来た。ひげおじさんは
オーバーのえりを立てちじこまった。

たしか今夜はクリスマスイブだ。

恋人同士がベンチに座っている。

彼には家族はいない、アルバイトで得るお金は学費と生活費で消えてゆく。

彼女は大家族のため働いたお金はすべて家計のたしにしている。

こんな夜はカフェで熱いコーヒーを飲みたいが、お金がない。

女の子が持って来たポットから湯気がたちのぼる。二人はカップで手を
暖めた。

リボンのついた箱を交換(こうかん)している。クリスマスプレゼントだ。

恋人同士が見つめ合いながら箱を開けた。出て来たのは一枚の紙切れ
だ。おたがい食い入るように見つめている。

「幸せ」と女の子は彼の手を頬(ほほ)にあてた。

「きっと実現するね」と彼は彼女の髪をなでた。

「貴方と子供と温かい家庭を築(きず)くのが夢」と女の子は書いた。

「君を幸せにする。そして永遠に愛しつづけるんだ」と男の子は綴
(つづ)った。

二人は、夢をプレゼントしたのだ。


時は過ぎ、彼は中堅企業の営業課長になった。

結婚をして3人の子宝に恵まれた。


寒い、雪が降って来た。クリスマスイブだ。ひげおじさんはオーバーのえ
りを立てた。

あの恋人同士の家族がプレゼントの交換(こうかん)をしている。

笑い声が温かくクリスマスツリーをつつんだ。

ひげおじさんは、ホッとして、ニコッと微笑んだ。

 

プロフィール

林 恭三

林 恭三 (はやし・きょうぞう)

日本アニメーション協会 会員